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2025/10/23

最強の薬機法対策?「何も語らない」広告戦略とは

最強の薬機法対策?「何も語らない」広告戦略とは|薬機法ライティング

日本の健康食品や化粧品のマーケティングにおいて、避けて通れないのが「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」の壁だ。
医薬品ではない商品が病気の改善や体の変化を謳うと、「無承認無許可医薬品」として薬機法に抵触してしまう可能性がある。
そのため、企業は直接的な表現を避けつつ、商品の価値や魅力を最大限に伝えなければならない。
この「言いたくても言えない」状況を乗り越えるための一つの戦略として、「消費者の認知形成」というものがある。

「認知」を用いたマーケティング戦略

健康食品やサプリメントは、その性質上、消費者が「美容や健康」を意識して購入するものだ。では、「効果効能」を謳わずして、消費者に商品の価値を訴求することはできるだろうか。

実は、それを実践している商品がある。

その代表的な例が、「ウコンの力」だ。
商品をよく見ても、そこには効果効能について一言も書かれていない。
しかし、コンビニの棚を見れば、誰もがその機能と目的を理解できるだろう。

なぜ、ブランドが効果効能について謳っていないのにもかかわらず、消費者は購入に至るのか。
そこには、長年の蓄積によって得られた二つの強力な要素が関わっていると考えられる。

1. 成分名そのものが効能を代弁している

特定の成分が持つ機能が社会に十分浸透している場合、あえてその効果効能を謳う必要はなくなるといえる。
この社会的な「共通認識」を活用することで、法規制を回避しつつ目的をしっかり伝えることができるのだ。

例:プロテイン製品

「プロテイン」という名称そのものが、消費者の間で「筋力アップ」「タンパク質補給」「健康的な体づくり」という認知を獲得しているため、具体的な効能表示がなくとも商品の目的が伝達される。

そのため、多くのプロテイン製品は、直接的に「筋肉増強」などとは謳わず、「高タンパク」といった成分表示や「理想のカラダへ」といった抽象的なスローガン、「おいしさアップ」といった飲みやすさを提示。
これにより、企業は法的なリスクを負うことなく、消費者が求める本質的な価値を伝えることに成功している。

例:エナジードリンク

多くのエナジードリンクの広告やパッケージでは、「疲労回復」や「集中力向上」といった具体的な効果効能を直接謳うことはしていない。
しかし、「高カフェイン」といった成分表示や、深夜や集中力を要するシーンでの飲用イメージを強く打ち出すことで、消費者に「眠気覚まし」「活力向上」という期待感を与えている。

2. 歴史と信頼で消費者の意識に刻み込む

長年にわたり市場で支持されてきた商品は、強固なブランド資産と歴史的な実績を有している。
そのため、具体的なコピーがなくても、消費者に「購入すべき目的」を瞬時に理解させることが可能だ。

例:正露丸

具体的な効果効能を大々的にアピールしなくても、「ラッパのマーク」を見ただけで、消費者は「どんな商品」で「どんな時に使用するのか」を明確にイメージすることができる。
これは、何十年にもわたる使用実績と、親から子へと受け継がれる体験の口コミによる、強固な信頼の蓄積があるためだといえるだろう。

ただし、これは大手企業や業界のパイオニアなど、ブランド資産が豊富な強者だからこそ成功する究極のコミュニケーション戦略。
裏を返すと、まだ市場に広く認知されていない新規参入の商品がこの戦略を採用することは極めて困難だ。
市場での存在感を確立するためには、法規を遵守しつつも訴求力の高い、適切な広告戦略が不可欠といえるだろう。

まとめ

このように、薬機法規制下で「効果効能を謳わずに売る」という戦略は、消費者の認知と信頼性を最大限に活用した有効なマーケティング手法の一つとして成立している。
一方で、圧倒的な市場認知と実績という土台があってこそ成り立つ手法でもある。
薬機法による厳しい規制は、ブランドの言葉を制限する「制約」であると同時に、その本質的なブランド力が試される「試金石」でもあるといえるだろう。

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