2025/12/22
今日から使える! あはき・柔整広告ガイドライン実践Q&A
令和7年2月18日、厚生労働省より「あはき・柔整広告ガイドライン」が発表された。
今回は、新しいルール下で安全かつ効果的に情報を発信するためのポイントをQ&A形式で解説したい。
Q. あはき・柔整法で広告が認められている事項を教えてください。
A. 法律で定められている、施術者の資格、氏名、施術所の基本情報、および施術時間に関する事項のみ広告可能です。
法律では、以下の事項以外は広告してはならないと規定されています。
1. 施術者に関する事項
・施術者である旨、並びに施術者の氏名および住所。
・あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業、または柔道整復の業務の種類。
2. 施術所に関する事項
・施術所の名称。
・電話番号および所在の場所を表示する事項。
・施術日または施術時間。
3. その他(厚生労働大臣が指定する事項)
法律の委任に基づき、厚生労働大臣が告示で指定する以下の事項も広告可能です。
・もみりようじ、やいと、えつ、小児鍼(はり)、ほねつぎ(または接骨)といった施術名。
・施術所開設に係る届出をした旨。
・医療保険療養費支給申請ができる旨。
・予約に基づく施術の実施。
・休日または夜間における施術の実施。
・出張による施術の実施。
・駐車設備に関する事項。
上記に挙げられた事項を広告する場合であっても、その内容が施術者の技能、施術方法または経歴に関する事項にわたることは、法律で禁止されています。
Q. 「あはき・柔整広告ガイドライン」は、どのような広告に適用されますか?
A. 施術所への誘引を目的とし、一般人が認識できる状態で発信されたすべての媒体の情報に適用されます。
このガイドラインは、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師が施術に関する広告を行う際に適用されます。
看板、チラシ、新聞、雑誌といった媒体を問わず、以下の3要件をすべて満たす情報が規制の対象です。
誘引性:利用者を施術所等に呼び込む意図があること。
特定性:施術者名または施術所等の名称が特定できること。
認知性:一般人が認知できる状態にあること。
なお、ウェブサイトは、上記の「認知性」を満たさないとされ、原則として広告とは見なされません。
しかし、スポンサー広告や有料での上位表示といった、上記の3要件を満たす場合は規制対象となります。
また、広告代理店やインフルエンサーなど、何人もこの規制の対象となる点に注意が必要です。
なお、以下のようなものも、広告に該当するとみなされる可能性があります。
- 「これは広告ではありません」と書きつつ、施術所の名称が記載されているもの。
- 口コミサイトに見せかけて、施術所が掲載料を支払っているもの。
- 病人が施術後に回復して元気になる姿のイラスト掲載。
- 病気に関する新聞記事を引用し、施術との関連を暗示するもの。
- 施術の効果を連想させるようなURLの使用。
Q. 広告可能な範囲と表現方法について教えてください。
A. 広告できるのは法律で定められた客観的事実のみですが、その伝え方は文字、写真、イラストなど多様な手段が可能です。
1. 広告できる範囲
広告可能な事項は、法と告示で定められた客観的な事実(名称、料金、場所など)に限定されます。
これらは、利用者が施術所を選択する際に役立つ、客観的かつ検証可能な情報であることが前提です。
2. 表現方法の自由度
広告可能な事項を伝える手段は、文字に限定されません。
写真、イラスト、映像、音声など、暗示的・間接的な表現も可能です。
また、利用者の理解を促すため、専門用語を分かりやすく言い換えたり、説明を加えたりするほか、略号や記号を使用したりすることも認められています。
【OK例】
・医療保険療養費支給申請ができます → 医療保険により利用者は施術費用の一部負担で施術を受けることができます
・一般社団法人 → (一社)
3. 広告不可能な事項(具体例)
ただし、これらの手段を使って、医療行為の誤認につながる表現や、規制が禁止する誇大・虚偽の内容を伝えることはできません。
【NG例】
・電話番号に、施術者の技能や施術の効果を連想させるような読み方(ルビ)を振ること
(例)「1374(痛みなし)」、「3776(みな治る)」 等
「国家資格保有」と表記することはできますか?
A. はい、可能です。
施術者が国家資格を保有している旨は、広告可能な事項として認められています。
利用者が安心して施術所を選択できるよう、以下のような表現が広告可能です。
【OK例】
あん摩マッサージ指圧師(国家資格保有)
柔道整復師(国家資格保有)
ただし、国家資格の保有を表記できる一方で、民間資格の保有や、外国における類似資格の保有・経歴を広告することは認められていません。
施術所が信頼性を高めるために利用できるのは、あくまで法に基づいた国家資格の表記に限られます。
Q. 施術所の名称として、「リハビリ」や「メディカル」という言葉を使ってもよいですか?
A. いいえ。「病院・診療所と誤解する恐れがある名称」は使用できません。
施術所の名称は、利用者がその業態を正しく認知するために極めて重要です。
「○○治療所」「メディカル」「クリニック」「リハビリ」といった名称は、医療機関と誤解される恐れがあるため使用できません。
また、「女性専門療院」「交通事故専門」「不妊鍼灸」「小顔矯正」など、対象者や特定の施術内容、効能を含んだ名称も、誤認や誇大広告につながるため広告不可能です。
【OK例】
「○○施術所(院)」、「○○鍼灸治療院」、「○○接骨院・鍼灸院」など、業態が明確な名称が望ましいとされます。
Q. 「診察」や「診療」というワードは使えますか?
A. いいえ。医療機関と誤認されるワードは、原則として使用できません。
施術所は医療機関ではないため、「施術日」「施術時間」といった情報を提供する際に、以下の表現を使うことは禁止されています。
NG例:「診療日」「診察時間」「休診日」「往診中」
【理由】
あん摩、はり、きゅう、柔道整復は、医師が行う「医療」とは区別される「医業類似行為」です。
「診」といった漢字は、病院や医師の行為を連想させ、利用者に誤解(医療誤認)を与えるリスクがあるため、避ける必要があります。
【OK例】
「施術日」「受付時間」「休療日」など。
出張施術についても、「訪問診療」ではなく「往療」などと表記する必要があります。
Q. 広告で「厚生労働省認定」とうたってもいいですか?
A. いいえ。行政機関による「認定」「指定」を受けているかのような表現は、広告不可能です。
施術所が広告できるのは、「都道府県知事へ施術所開設に係る届出をした旨」という客観的事実のみです。
以下の例のように、行政機関から特別に優良な施術所として認定・指定を受けているかのように誤解させる表現は、優良誤認を招くため禁止されています。
【NG例】
厚生労働省認定・認可
厚生労働省指定
都道府県知事認定・認可
都道府県知事指定
施術所は、法令に基づき届出を行っている事実(例:「〇〇県 開設届出済」)は広告可能ですが、「認定」や「指定」を受けている旨を謳うことはできません。
Q. 施術に「健康保険」が使えることを広告できますか?
A. はい、広告可能です。ただし、一定の要件を満たす必要があります。
「医療保険療養費支給申請ができる旨」は広告可能な事項です。
しかし、利用者に「いつでもどこでも保険が使える」と誤解されないよう、以下の要件を守る必要があります。
1. 医師の同意の明示
あはき(鍼灸・マッサージ)の場合:施術を受けるには、医師の同意が必要な旨を明示しなければなりません。
柔道整復(骨折・脱臼)の場合:脱臼または骨折の患部の施術に係る申請については、医師の同意が必要な旨を明示する必要があります。
2. 分かりやすい表記
保険適用について、利用者の理解促進のために分かりやすい表現に言い換えることが可能です。
【OK例】
「医療保険により、利用者は施術費用の一部負担で施術を受けることができます」
「一旦施術費用の全額を負担いただきますが、後で保険者に対してその費用の一部を請求することができます」
3. 曖昧な表現の禁止
「各種保険取扱い」「労災保険取扱い」「交通事故取扱い」といった適用範囲が曖昧な表現は、利用者の誤解を招くため広告不可能な事項とされています。
Q. 新ガイドラインで特に注意すべき「禁止される広告表現」にはどのようなものがありますか?
A. 法律で許された事項以外の広告は原則禁止されています。
特に「施術者の技能や経歴の誇示」「虚偽・誇大広告」「比較優良・公序良俗に反する広告」は厳しく規制されます。
広告可能な事項(名称、料金、場所など)に関する広告であったとしても、以下の行為は「適切ではない」とされ、多くは薬機法や景表法といった他の法令によっても罰則の対象となり得ます。
1. 施術者の技能、施術方法または経歴に関する広告の禁止(あはき法・柔整師法による禁止事項)
施術者の優位性や技術を誇示する行為は、医療誤認を招くため認められません。
【NG例】
技能・方法:「慢性病の根本治療」「高い技術」「痛くない鍼」「○○流指圧」
経歴:「○○大学にて学位取得」「○○療法の第一人者に師事」「有名人のトレーナー」
2. 虚偽広告および誇大広告の禁止
誤った情報や誤認により利用者を不当に誘引する広告は禁止されます。
【NG例】
実際は休業日があるにもかかわらず「年中無休」と表示する。
適用条件があるにもかかわらず「どんなお客様も医療保険療養費支給申請ができます」と表示する。
3. 比較優良広告および公序良俗に反する広告の禁止
客観的な事実であっても、自らの優位性を示す比較広告は禁止されます。
【NG例】
「県内で唯一、○○に対応しています!」など、他者との比較により施術所の優秀性を表示する。
4. 他法令による禁止事項
あはき師法等に違反しない場合でも、医療法、薬機法、景品表示法といった他の広告関連法令に抵触する広告も禁止されます。
事業者は、これらの法令すべてを遵守する義務があります。
Q. 違反広告が発覚した場合、行政指導の流れと事業者が負うリスクを教えてください。
A. 行政指導に従わない場合、刑事告発や受領委任契約の違反につながるリスクがあります。
違反広告が発見された場合、まず行政指導(是正の要求)が行われます。
これに従わない、あるいは違反を繰り返した場合には、刑事告発が検討されることになります。
さらに、罰金刑に至った場合、健康保険を使った施術に必要な受領委任協定または契約に違反したと見なされ、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性も否めません。
違反広告が指摘された場合には、行政指導に速やかに従うことが必須だといえるでしょう。
Q. ホームページに掲載すべき事項は何ですか?
A. 利用者が施術所を選択し、適切にサービスを受けるために必要な「基本的な情報」の掲載が推奨されます。
利用者を保護し、適切な選択を支援する観点から、以下の情報をウェブサイト等に掲載すべきとされています。
問い合わせ先
表示される情報の内容に関する問い合わせ先。
費用に関する事項
自費の施術に係る施術内容、通常必要とされる費用等。
回数券やプリペイドカードを販売する場合は、その内容や契約内容。
リスクに関する事項
自費の施術に係る主なリスク、副作用等の情報。
Q. ホームページに「口コミサイトで1位」「絶対に治る施術」と掲載してもよいですか?
A. いいえ。利用者を不当に誘引する「虚偽・誇大表現」は禁止されています。
一般的なウェブサイト等は「広告」に該当しないため、自主的な取り組みが促されます。
しかし、以下の虚偽または誇大な内容は、利用者保護の観点から掲載すべきでない事項とされています。
虚偽または客観的事実の証明ができないもの
「絶対安全な施術です」「絶対に治る施術」など、虚偽または客観的事実の証明ができない断定表現や、加工・修正した施術前・施術後の写真等を掲載するもの。
優良性の比較・誇張
「口コミサイトで1位を獲得」「○○にも掲載された」など、他との比較で優良性を示そうとするもの。
過度な強調
施術所等に都合が良い情報や費用を過度に強調するもの。
受療をあおる表現
「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受療ください」など、科学的な根拠が乏しい情報で利用者の不安を過度にあおり、早急な受療を不当に誘導するもの。
その他
公序良俗に反するもの、品位を損ねる内容のもの、広告関連法令等において禁止されるもの。
Q. 無資格の整体やエステサロンの広告にも、このガイドラインの基準が適用されますか?
A. 直接適用されるものではありませんが、規制すべき「不適切表現」の判断基準となります。
無資格業態の広告は、医師法、薬機法、景品表示法などの横断的な規制を受けます。
また、今回のガイドラインに準じた適切な在り方が示され、関係団体等による自主的な取り組みが促されています。
特に無資格業態が広告に掲載すべきでない事項として、以下の点が明確化されました。
【NG例】
痛み症状の訴求: 「腰痛」「膝の痛み」「慢性の肩こり・疲労」といった症状そのものを訴求する表現。
国家資格の誤認: 「マッサージ」という語句の使用など、国家資格が必要な業務を行っていると誤認させる表示。
無資格業態は、料金の安さや急いで利用を促す表現、科学的根拠が乏しい情報はもちろん、「痛み」や「慢性の症状」そのものを訴求軸としないよう、表現をより厳格に管理する必要があるといえるでしょう。
まとめ
今回の「あはき・柔整広告ガイドライン」の発出は、これまで曖昧になりがちだった施術所広告の規制基準を明確に示す、重要な指針となります。
医療誤認を招く表現や、施術者の技能・経歴の誇示が厳しく禁止されているのはもちろん、ウェブサイトや無資格者の広告についても、消費者を不当に誘引しないためのルールを事業者が順守するよう心がける必要があります。
常に客観的な事実に基づき、透明性の高い情報発信を徹底することで、利用者からの信頼獲得と事業の安定に直結するといえるでしょう。